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2015年8月
 三股町立文化会館
2015年9月
 枝光本町商店街アイアンシアター(北九州)
 津・あけぼの座(三重)
2015年11月
 門川町総合文化会館
2015年12月
 シアターねこ(愛媛)
 こまばアゴラ劇場(東京)

第14回公演『ただいま』(2015年)

作・演出 永山智行出演   / 出演 あべゆう・かみもと千春・濵砂崇浩・大浦愛・大迫紗佑里

柴幸男(劇作家・演出家・ままごと主宰)

――たまげた。こふく劇場の『ただいま』を見て僕は心底、幸福にたまげてしまった。というわけで、たまげた理由をここに列挙します。

まず戯曲に練りこまれたポエジー。作品を貫通する暖かで冷静な目線。ストイックで優しい演出。絶妙な音響、照明。斬新で趣ある舞台美術。

宮崎弁の心地よさ。こふく劇場が過ごしてきた時間。まだまだ日本には新しくて懐かしいものがあるという希望。

でも、なんだかんだ言って、一番強く思うのは、とにかく俳優の顔がよかったなぁってことです。

第14回公演「ただいま」に寄せられたコメント                           

鳴海康平津あけぼの座 芸術監督/第七劇場 演出家)

――ある日、何かが消えてしまって、それと一緒に自分の一部も失われてしまったような体験。こふく劇場「ただいま」ではこの体験のいくつかが編まれている。そういう誰にでも大なり小なり経験ある体験があたたかく丁寧に描かれている。作品の登場人物と同様に、この喪失感は多くの場合、自分ではどうしようもない、もしくは理解しようがない原因だったりするのに、ふとした瞬間に自分にはどうにかできたかもしれないという錯覚に陥り、ほどなくしてやはり自分の一部と一緒にそれは永遠に失われてしまったのだという結論を出すことになる。そして永遠に失われてしまった空白を片手に抱えて日々を暮らしていく方法をどうにかこうにか身につけたころ、いつの間にかもう片方の手には、失われた空白と同じくらいの重さの失いたくないと願う何かを抱えていることに気がつく。そのとき、ひとが何か言葉にするとしたら何が言えるのだろう。それはきっと祈りにも似た「ただいま」という言葉がふさわしいと、この作品が教えてくれた気がする。

中井美穂(フリーアナウンサー)

劇団こふく劇場は、昨年25周年を迎えた宮崎にある劇団で、宮崎県立芸術劇場演劇ディレクターも務める永山智行さんが作・演出を担当。「25年目のホームドラマ」と銘打たれていますが演出もとてもユニーク。セットも非常にシンプルにでもよく計算されて作られています。役者たちはまるで音楽の二重唱や三重唱のようにト書きを読み、太鼓も鐘、楽器も演奏したりする。美しい呼吸からうたわれ読まれるセリフは現代口語で宮崎弁。動きはお能のようで、時に仏像のボーズみたいに見える。亡くなった人たちが普通に時空を超えて登場し、そのさかいめで語り合う姿に心をぎゅっとつかまれました。人の声の持つやさしさ、暖かさに救われました。自分の今いる場所は昔からずっと繋がっていたのだと感じましたし、そんな中いまは失ってしまった人の存在は完全に忘れられないしかけがえのないもの。私の後ろかとなりにいるかもしれないなら、一緒に淡々と丁寧に地に足をつけて生きていくことが一番なのかなと思わされる。日本の山里にいるかのような気持ちになり、静かなのに確かな強いこころが観客に届けられました。九州まで行っても観て観たいし、あとをひくお芝居でした。東京に来る機会はまだまだ少ないのでぜひ足を運んで頂きたいです。

(「悲劇喜劇」2016年3月号より)

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